年次有給休暇の取得により皆勤手当の減額・不支給は認められるか

Ⅰ 事件概要

本件はタクシー会社が導入する皆勤手当の支給についての争いです。

とある会社は乗務員の出勤率向上を目的として、シフト通りに出勤すれば月額4,100円の皆勤手当支給していました。

一方で年次有給休暇(以下、年休という)を取得した場合、皆勤手当については欠勤と同様に扱い、

1回取得で2,050円
2回取得で4,100円 を不支給とする制度を設けています。

これに対し乗務員は「年休の取得を理由に不利益は扱いをするのは無効だ」と主張し、皆勤手当の支払いを会社に求めた事案です。

Ⅱ 今回の争点

年休の取得を理由に皆勤手当の減額・不支給とする制度は労基法39条(年休制度)134条(現136条)(不利益取り扱いの禁止)の違反として公序良俗に反するか

Ⅲ 判決内容

最高裁は、134条(現136条)については使用者に対して努力義務を定めたものであり、年休取得を理由に不利益な取り扱いをすることは、直ちに無効となるものではないと判断しました。

判決の材料として以下の点があげられました。

①皆勤手当を乗務員の出勤率向上を目的とした報奨的な手当であったこと

②控除額が月額給与の最大で約1.85%しか占めておらず、比較的小さいこと

③原告自身も数年間にたくさん年休を取得できていた。

以上のことから、年休取得を実質的に妨げるほどの抑止力はないと認定。 

Ⅳ 労務管理上のポイント

本判決は、年休取得者に対する不利益取り扱いが直ちに無効ではないと示しましたが、慎重な判断が必要となります。

1 皆勤手当の額が大きく、控除額も年休取得に応じて大きくなれば従業員の経済的不利益も大きくなり、年休取得を抑制することにつながり無効となりやすい。

2 単に無欠勤だから手当を支給する制度を設けるのではなく、本件のように仕事を回すための出勤率向上を目的とするなど、手当ごとに支給する目的を就業規則に明記にすることが大切です。

近年は年休の取得推進が進み、皆勤手当を支給する会社は少なくなってきています。

厚生労働省の就労条件総合調査では、令和7年度の年休取得率は66.9%と過去最高となりました。
年休取得によりマイナスな評価をしない運用を徹底するとともに、代替要員の確保やシフトの工夫を行い、事業を正常に運営できる体制を進めることが重要です。

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